偽りの結婚
「すまなかった……」
後悔したような表情ともとれるラルフの顔を見て、ズキンと心臓が軋む。
ラルフは何に対して誤ったのか…
偽りの妃と関係を持ってしまったことに対してか。
気持ちはないが、あの条件を違えてしまいかねないことをしてしまったことに対してか。
どちらにせよ、謝られてしまっては余計に居た堪れない。
「謝らないでください…私は本当に大丈夫ですから」
それは、自分に言い聞かせるための言葉でもあった。
「あぁ…けれど、今日の見送りは休んだ方が良い。ソフィアには私から挨拶をしておくから」
今日はソフィア様が帰国なさる日。
それを聞いて一気に現実に引き寄せられるとともに、ズンと沈む私の心。
「ええ…そうしてください」
ソフィアの見送りが出来ないのは気が引けたが、今はその方が都合がいい。
体も思うように動かないし、どんな顔をして会えばいいか分からないから。
「今日は夜まで帰りませんか?」
珍しくラルフの帰りを気にする言葉をラルフにかける。