偽りの結婚
そして、ある一点で目がとまる。
これって………
首筋にある赤い痣のようなもの。
髪で隠れるギリギリのところにあるそれを、手でなぞりながら触れる。
それは間違いなくラルフがつけた所有印だった。
熱に浮かされたような白濁とした意識の中、チリッとした痛みが走ったのはこれだったのね…
私はなんてズルイんだろう……
あの時、ラルフに抱かれても良いと思った。
ラルフが手に入らないなら、温もりだけでも欲しいと思った。
それがソフィア様を傷つける事になるとしても…
けれど、そこに幸せはなかった。
ただ、虚しいだけ。
だから、この所有印は決して甘いものではない。
これは私に科された罪の証。
これを見る度に罪悪感に苛まれるのでしょうね…
ふっと自嘲的に笑い、バスルームを出た。