偽りの結婚
なんとか怪しまれずに王宮のエントランスまで来たところで―――
「シェイリーンさん?」
と、訝しげな声が自分の名を呼んだ。
ドキッと心臓が嫌な鼓動を打ち、心拍数が上がるのを感じながら後ろを振り向くと…
「お母様…」
そこには侍女を数人連れたリエナがいた。
「ソフィア様のお見送りに行かれたんじゃ…」
ドキドキと早鐘を打つ心臓は、自分の耳まで聞こえてきそうで、カラカラに渇いた喉から出た言葉は掠れていた。
「それはラルフだけよ。私とエドワードはエントランスでお別れしたわ」
エドワードとリエナも国境近くまで見送りに行くと思っていた私は慌てた。
早くこの場を離れなければ…と思うが、地面に足の裏がペタリと張りついて動けない。
適当なことを言って逃げれば良いものの、焦って動けないでいるうちに更に追いこまれるような問いを投げかけられた。