偽りの結婚
「イリア、誰と話しているのですか?」
扉の奥から現れたのはこの屋敷の主、ミランダだった。
私の姿を捉えると、イリアと同様、一瞬驚いたような顔になる。
「お継母様…」
イリアにだって歓迎されていないのだ。
きっとミランダにも非難の目を向けられるのかと思うと、声が小さくなる。
しかし、そんな私の予想は大きく外れた。
「あら、シェイリーンじゃないの!」
ミランダが自分に投げかけるような声とは思えないほど明るい声。
それは、一瞬歓迎してくれているかのような錯覚に陥るほどだ。
「ただいま帰りました」
これは夢なの?
お継母様が私に微笑みかけてくれている。
「もう、ここは貴方の家ではないんだけど?」
容赦なく冷たい声を浴びせるのは、いつもと変わらぬ態度のイリア。