偽りの結婚
「シェイリーン、貴方は勝手に出て行ったのよ?それを忘れたの?」
返ってきたのは先程私を“家族”と言った口とは思えないほど冷たい返事。
瞳の奥がじわじわと熱くなるのを感じた。
「お継母様…でも、それは…っ「言い訳は聞かないわ」
最後まで言わないうちに、苛々とした声に遮られる。
「勝手に出て行った者には二度とスターンの家の敷居はまたがせません」
ピシャリと言い放ち、取り付く島もなく、バタンッと扉を閉められた。
扉が閉められる時に見えた、ミランダとイリアの冷たい笑みに絶望する。
「お継母様…お義姉様…お願い……」
聞いている方が切なくなるくらいに声を絞り出す。
心の底ではきっと迎え入れてくれると思っていた。
血の繋がっていない家族でも、きっと…と。
しかし、そんな私の淡い想いは無残にも散ったのだった。
秋に入ろうかというこの季節―――
冷たくなってきた風を感じながら、私は暫く扉の前で立ち尽くしていた。