偽りの結婚




「シェイリーン!」


はぁはぁと乱れる呼吸を整えながら、名前を呼ばれる。



「アリア…」


赤がかった茶色い髪に、琥珀色の瞳を持った親友。

その姿を捉えた瞬間、込み上げるものがあり、母親譲りのエメラルドグリーンの瞳が揺れる。





「何かあったの?一人でここまで来るなんて」


言葉を選びながら慎重に話し出すアリア。




「私…ふ…っく……」


ラルフの想いに決別したことを思い出して悲しくなったのか。

家族に突き放されて深く傷ついたからか。

はたまた、親友の顔を見て安心したのか。

色んな感情が一気に込み上げ、ぐちゃぐちゃになる。

そして、言葉にならない代わりに、涙となって溢れだしてきた。




ピタッ―――

涙で濡れる頬を小さな手が包む。

これは私が泣いている時に、いつもアリアがすること。



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