偽りの結婚
「貴方は幸せじゃないわ」
それまで、話を促す様に「うん」としか答えなかったアリアが、初めて口をはさんだ。
眉を寄せ、辛そうな表情をして…
「私はいいの……幸せになりたかったらあんな結婚なんてしなかったから」
そう、私とラルフは始まりからして間違っていた。
偽りの結婚をしてしまった二人には、最後まで“愛”など存在しなかった。
幸せになる権利や資格など、その時からなかったのだから。
「あの時は…でしょう?人の気持ちは時を経て変わるものよ?」
「っ…!」
ヒュッと息を飲み、のどに詰まるようにして息を上手く吐き出せない。
代わりにエメラルドグリーンの瞳が一層潤う。
「けれど、私は落ちぶれた伯爵家の人間だし、ソフィア様のように美しくもない。ラルフと釣り合うものなんて何一つ持っていないの…」
言わないと決めていたのに、アリアの前では弱い自分が出てくる。