偽りの結婚




しかし、そのシェイリーンが今寝室にいない。


「まさか、また書庫に行っているのか?」



今日の日のように帰りが遅いと、シェイリーンは本を読んで待っている。

彼女はかなりの読書家なようで、一日に読む本の量もすさまじい。

いつかも、帰って来た時に姿がなくて焦ったが、大量の本を抱えて書庫から帰ってきたシェイリーンを見た時はほっと安堵したものだった。





「待ってみるか」


静まり返る寝室でポツリと呟き、机について持ち帰った書類を開き出す。

先に寝れば良いものの、染み付いた習慣からシェイリーンがいなくては眠る事さえ出来ない。






思えばこんな風に自分のプライベートに他人を、しかも女を置いたのは初めての事だと思う。

自分で言うのもなんだが、昔から言いよってくる者はたくさんいて、相手には欠いたことがなかった。

けれど、それはその場限りの相手。

自分が王族ということもあってか、寄ってくる女は家柄や身分、財産が目的の者ばかり。

それでなくても、甘やかされて育った令嬢たちは、皆が皆一度関係を持っただけで、王子の女気取りであるから溜息が出る。

我が物顔で隣にいられるのもうんざりで、一夜限りの相手や、割り切った相手とのみ付き合ってきた。


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