偽りの結婚




けれど、やはり19の少女だと思ったのはグレイク侯爵のパーティーでの事件のこと。

伯爵家のシェイリーンが自分と結婚したことで、嫉妬深い令嬢たちの非難や侮辱の視線が集まっていたのは知っていた。

しかし、本人は気にした様子もなかったし、どこか冷たい目線で冷静にかわしていた。

本人がそんな調子なので、自分が割り込む必要もないと判断して放っていたが…その日は違った。



いつものごとく、あからさまな態度をとる令嬢たちに連れられ、ボートに乗った彼女。

何となく心配で、グレイク侯爵を誘って自分もボートに乗って湖を出た。

暫くの後、明らかに普段とは違う興奮した彼女が、ボートで勢いよく立ち上がるのを見て―――



危ないッ…と思った時にはすでに遅かった。

湖に引き寄せられるようにして、その体が水面を揺らした時には、自分もその湖に飛び込んでいた。

なんの足掻きも見せずに、深い暗い湖の深底に落ちて行く彼女を捉え、何故か苛々として…

けれど、引き上げた後なかなか目を開けない彼女に、突如目の前が暗くなるような強烈な焦りが生じ…

そこには、今まで感じたことのない感情ばかりに翻弄される自分がいた。




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