偽りの結婚
「ラルフ様ッ…!!」
こちらの目的は違うようだ。
義姉のイリアは一瞬驚いた表情をするも、この国の王子だと分かるや否やすぐに嬉しそうな表情に変わる。
「お母様、ラルフ様がお出でよ」
屋敷の中の母親を呼び、ラルフが来たことを伝える。
そして、程なくして継母のミランダもやってきた。
「まぁ、ラルフ様、お久しぶりでございます」
イリアと同様に、嬉しそうな表情をしている。
「今日は一体何の御用で?」
シェイリーンとは似ても似つかぬ姉が、馴れ馴れしく腕に抱きつき、甘えるような上目遣いの視線を向ける。
……これだからシェイリーンの実家には来たくないんだ。
自分に向けられる意味ありげな視線には、明らかに熱がこもっていて。
仮にも自分の妹の夫に対して向けるような視線か、と問いたくなる。
「シェイリーンは来ているかな?」
その視線に気づかないふりをして、話を進める。
「シェイリーンですか?…ここにはいませんけど」
シェイリーンの名が出たことに、眉をひそめ、不機嫌を露わにするイリア。
まるで、私に会いに来たんじゃないの?とでも言いたげだ。