偽りの結婚




「部屋はたくさん余っているから気にしなくても大丈夫なのに」

「ありがとうございます」


気にするなと言われても、何のお返しも出来ない私にとってはもどかしかった。

けれど今はお礼を言うくらいしか出来ない。

そんな私の考えを察したのか、ベルナルドは慌てて話題を変える。




「今日はディランに会いに行っていたんだろう?」

「はい。久しぶりに会いましたから、つい時間を忘れて長居してしまいました」


ディランの名が出たことに、私はパァっと明るい表情をする。

ラルフの妃として王宮に入って以来会っていなかったので、とても嬉しい再会だった。




「ディランは元気だったかい?」


話題が変わった途端饒舌になる私にベルナルドは内心笑いながらも話を促す。




「えぇ、とっても元気でした!数日前に雨が強い日がありましたでしょう?雷も強くてディランのことが心配だったんですけど、ピンピンしてました」


あの日の雨は異常なほどで…

特に森は気候の変動を受けやすいから、ディランの事が心配でしかたなかった。


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