偽りの結婚




「もう、気持ちの整理はついたかい?」


ベルナルドの固い声が部屋に響く。

ハッとして見上げれば、その瞳はとても真剣だった。




「気持ちの…整理?」


真剣な琥珀色の瞳に魅せられていたからか、言われた事の意味を考えたくなかったからか、ベルナルドの言葉をそのまま繰り返す。




「ラルフ王子のこと」

「っ!」


ベルナルドの口から出た言葉に動揺を隠せなかった。



なんでラルフの事を聞くの?

もしかして表面に出ていた?

アリアは口が固いし、ベルナルドさんは知らないはずなのに。

きっと、偽りの結婚をした私のことを心配して言ってくれている言葉なのよ。




冷静に考えつつも、頭のどこかで自嘲する。

私はなぜこんなに必死に隠しているんだろう…と。



ベルナルドさんだったら信頼のおける人なのに。

隠さなければいけないほど、認められない想いなのだろうか。

どちらにせよ諦めると決めた想いだ。



ベルナルドの問いに対する答えは決まっている。



< 496 / 561 >

この作品をシェア

pagetop