偽りの結婚
「申し訳ございませんお義姉様。ですが私はこのようなドレスしか持っていませんので…」
二人がスターン家に来たころから嫌われていた私には財産が分け与えられるはずもなく。
父が存命中に買ってもらったドレスしか持っていないため、生地も継ぎはぎだらけ。
今来ている服は森に入る為に選んだ服だったので、みすぼらしく見えるのも無理なかった。
「それに私には綺麗なドレスは必要ありませんから」
その答えに「そうよね」と満足げな笑みを浮かべるイリア。
これ以上話をしていても自分が惨めになるばかりだと考え、抱えたかごを持って食堂に向かおうとした時。
「待ちなさい」
継母のミランダが私を呼び止める。
振り返れば、いかにも不愉快そうな顔が私を見据える。
「貴方にもスターン家に相応しいドレスを着てもらわねばならない時が来ました」
「お母様!」
何の感情もこもっていない瞳でそう告げられた瞬間、イリアが過剰に反応する。
しかし、ミランダはイリアを無視して淡々と話す。