偽りの結婚
「ソフィア様も辛い恋をしてきたんですね…」
ソフィアの話を聞いているとどうしても自分に重ねてしまう。
身分違いの恋の辛さは自分が一番知っているから…
「それなりに辛い時期もあっただろうね。けれど、ソフィアはあんな容姿をしていて、そこら辺の男よりも逞しいから、周りの反対も押し切るだろうな」
ラルフは昔からソフィアの事を知っているからか心配はしていない様子。
俯いていた私の頬に手を添えて上を向かされる。
「それよりもだ。今は僕たちの話だろう?」
スッと瞳を細め真剣な顔つきになるラルフ。
「さっき伝えたことに偽りはない」
ドキッ…----
ラルフの熱い視線が私を射抜く。
対する私は呼吸を忘れたように息を飲んだ。
ラルフとソフィアの関係が友人だと分かっても、まだ身分という壁がある。
しかも私達は一度離婚しているのだ。
落ちぶれた伯爵家の娘がまたラルフと一緒になれば、風当たりも更に増すだろうことが予想される。
本当に私はラルフに愛される価値のある人間なのか。
もっと相応しい人が出てくるのではないか。
そう考えているとなかなか返事をすることが出来ない。
口を開こうとしない私に痺れを切らしたラルフが動く。