偽りの結婚
それはとても綺麗な動作だった―――
ラルフが腰に回した手を放してスッと片膝を折る。
そしてラルフは私の足元に跪いた。
「ラルフ……?」
ラルフの行為を訝しげに見つめる。
そんな私を余所にラルフは私のドレスの裾を恭しく持ち上げ、そこに口づけを落とした。
溜息が零れそうなほど様になっているラルフの動作に一瞬見惚れてしまう。
それは騎士が主に絶対的な忠誠を誓うための行為。
本来ならば王子であるラルフがするはずもない行為。
そんなラルフを呆然と見つめていた。
するとラルフは片膝をついたまま持っていたドレスの裾を放し、私の手を取る。
交差するエメラルドグリーンの瞳と紺碧の瞳。
ラルフは真摯な眼差しを私に向けて告げる。
ありったけの情熱と想いを込めて。
「シェイリーン、僕は全身全霊で君を愛している。君なしの人生など考えられないほどに。どうか僕の妻になってください」
これ以上はないと言うくらいに情熱的に、それでいて恭しいプロポーズに私の頭は真っ白になった。
時間が止まったかのように微動だにしない私にラルフが柔らかく微笑んだ。