偽りの結婚
「本当に……私で良いの?」
瞬きをすれば零れ落ちてしまいそうな涙をグッと抑え声を絞り出す。
「あぁ」
ラルフは微笑みながら一言そう答える。
「貴方の事…好きでいていいの?」
くしゃりと表情を歪ませた私の頬に一筋の涙が伝う。
それは許しを請わなければ認められなかった気持ち。
貴方に認められて初めて許される…
「もちろんだ。むしろそうでなくては僕が困る」
困ったように笑ったかと思えば次の瞬間には真摯な視線をこちらに向ける。
「もう君なしの未来は考えられない」
先程プロポーズをした時と同じ熱を込めて告げられた。
途端にとめどなく溢れてくる涙。
「返事を聞かせてくれるか?」
ラルフの不安気な声が耳に届く。
自分の中に湧く狂おしいまでの愛おしさを言葉にのせて告げる。
「私は…ラルフの傍にいたい」
消え入りそうなほどに小さな声で。
けれどラルフと同様の情熱を込めて告げる。
「私を貴方の妃にしてください」