偽りの結婚
「来週、国中の爵位を持った女性を集めて舞踏会が開かれます」
国中の女性を集めての舞踏会とはとても大きい。
何故そのような舞踏会が開かれるのだろうか。
「本当は貴方のようなみすぼらしい小姓は連れて行きたくないのだけど、国王よりの勅令でもありますので、貴方にも出席してもらいます」
私は小姓ではなく、一応伯爵令嬢です…と心の中で呟きつつも黙って話を聞く。
最初こそ口を出していたが二対一では勝ち目がないのは明らかなため、何時の間にか諦める癖が出来てしまった。
「もちろん、その薄汚いドレスで行くことは許されません。いいですね?」
「けれど、ご存じのとおり私にはそのような舞踏会に出席するためのドレスを持っていませんし、マナーも分かりません」
既に私が舞踏会へ行くことになっていることに少し焦りつつ、訴える。
すると、今まで黙ってやり取りを聞いていたイリアが割って入る。
「そうよ。本人がこう言ってるんだからシェイリーンは連れて行かなくてもいいじゃない。一人くらい行かなくてもばれはしないわ」
これには大いに賛成だった。
小さなころから舞踏会やパーティーといった社交界と無縁の世界で過ごしてきた私はダンスはおろかマナーさえ分からなかったから。