偽りの結婚
「そんなに畏まらなくてもいいよ」
座ったままこちらを見上げて笑顔を向けてくる。
見上げられているのになぜかそんな感じを受けないのは、やはり王族として上に立つ者の風格を兼ね備えているからだろうか。
「それよりも、そろそろ君の名前を教えてくれるかい?」
「申し遅れました。シェイリーン……スターンと申します」
スターンの名前を口に出すのは気が引けたが、相手はこの国の王子だ。
逆らうわけにもいかず、姓も偽らず答えた。