偽りの結婚
「そうですか、お褒めいただき光栄です」
「あぁ、よろしくね、シェイリーン」
皮肉もスラリとかわし、手を差し出すラルフ。
その動作はとても自然で。
まさに王子の身分にふさわしい。
偽物の笑顔で差し出される手に無言の圧力を感じた。
「……よろしくお願いします、ラルフ様」
諦めたように溜息を一つこぼし、ラルフの手をとる。
しかし、目の前の王子はそれだけでは満足しなかった。
「‘様’はやめてくれないかい?」
「でも…貴方はこの国の王子なのだから…」
一国の王子に対して敬称をつけずに呼ぶのは気が引ける。