偽りの結婚
「図星か。だから申し訳なかったと言っているじゃないか。まさかその歳にもなってファーストキスがまだだとは思わなかったんだ」
クルッとラルフの方を向き、真っ赤な顔で睨み上げる。
なんでこの人はこうストレートなの!?
それに絶対に申し訳ないなんて思っていないわ。
「悪かったですね、この歳でファーストキスで!」
そう…私は結婚式で人生初となるファーストキスをしたのである。
瞳を潤ませながらむきになる私にラルフが困ったように笑う。
「しょうがないだろう結婚式なのだから。あそこでキスしなければ疑われていたからね」
「ッ…わかっています!」
いや、分かっていなかった。
誓いのキスのことなど微塵も考えていなかった私にとってはそんな事考える暇もなくて。
神父に誓いのキスを促され真っ白になっているところをラルフに唇を奪われた。
あのキスで、夫婦を演じることがどのようなことか、やっとわかった気がする。
しかし、キス一つで何も動じないラルフはさすがというべきか…
ラルフにとってキスなんて挨拶のようなものだということはよく分かった。