偽りの結婚
「それで?何の用ですか?」
自分の頬に当てられていた手をやんわり払いながら用件を聞く。
「ああ…母上が君の事を探していてね。もしかしたら、また部屋に籠っているのかと思って呼びに来たんだ。」
「リエナ様が私を?何かしら?」
「さぁ…なんだろうね。母上の部屋に行ってみるといい」
用件はラルフにも分からないらしい。
リエナとはこの国の王妃である。
ラルフと同じブロンドの髪に、穏やかなスカイブルーの瞳を持った女性だった。
元々ノルマン家の令嬢を候補にあげていたのにもかかわらず、国王と王妃はシェイリーンを温かく迎えてくれた。
…と言うより、とても喜んで大歓迎されたのだ。
舞踏会の夜、ラルフが私を壇上に連れて行ったとき。
二人はとても驚いた顔をした後、とても温かい笑顔を向けてくれた。
その笑顔を思えば、二人を騙している事実が複雑だった。