偽りの結婚
つかの間の休息
翌日の朝―――――
「ん……」
日の光に導かれるように声を上げる。
そして、眠い目をうっすらと開けて飛び込んできた光景に驚愕した。
「……ッ!!」
眠っていても均整な顔立ち。
長い睫毛が影を落とす。
夜寝るときは一人だったはずなのに…
そう思いながら隣に眠る“夫”を見る。
そう…それは紛れもなくラルフだった。
ラルフの体が大きいからか、キングサイズのベッドも狭く感じるのは気のせいではない。
帰ってこないと思っていたのでベッドの中央に寝ていたが、いつの間にかベッドの端に移動していた。
いつの間に帰ってきたのかしら…ぐっすり寝ていたから全然分からなかったわ。
夜更けに帰ってきたのだろう、ラルフはまだ目を覚ます気配はなかった。
目を閉じて寝ている顔はやはり整っており、改めて端正な顔立ちだということが分かる。
「眠っていてさえいれば、害はないのだけど…」
ラルフの方に体を向け呟く。
「それは、どういう意味かな?」
仰向けにした体を私の方にゆっくり向けながら、寝起きとは思えないはっきりとした声を出すラルフ。