偽りの結婚


すると、ラルフは目を見張った後にクク…と笑いだす。

それは完璧な笑顔を張り付けている時のラルフではなく…



「正直だな、シェイリーンは」


困ったような笑みをうかべながらも、どこか楽しそうに目を細めている様に見えた。





「それは褒められているのかしら」

「僕としては褒めているつもりだが?僕の周りには自分の意見をはっきりと伝えられるものが少ないからね」


笑っているけれどどこか哀愁の帯びた表情をするラルフに溜め息をつく。





「それは貴方も素直になっていない証拠だわ。こちらが素直になれば、相手もそれに応えてくれるものよ」


再び目を丸くして、意表を突かれたような顔をしているラルフ。





「身分の違いが明らかだから、相手も素直になってくれるとは言えないけれど。私達は偽りといえど夫婦で、同じ立場だから言いたいことが言えるのだと思うわ。それが夫婦っていうものでしょう?」


夫婦でも言えないこともあるかもしれないし、どんな関係であろうと言えないことはあるだろう。

だから、例えラルフが素直になったとしても、王子と言う身分の手前全ての人がおいそれと素直になってくれるわけではない。


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