偽りの結婚
「へぇ…シェイリーンの口から夫婦という言葉が聞けるとは珍しい。でも本気になっては駄目だよ、僕たちは偽りの関係なんだ」
拾ってほしい言葉は拾われず、話をはぐらかされた。
真面目に応えた私がいけなかった。
「分かっているわ。…ただ、私の父が、互いに信頼しあえる夫婦になるためには、言いたいことや言わなければならないことを言葉にして相手に伝えなければならない、と言っていたのを思い出しただけよ」
「さすが、僕の妃だ。さて、そろそろ起きようか。朝食は一緒にとろう」
朝食は……ね。
今日もきっとどこかの令嬢のところにでも行くのだろう。
毎日公務もこなして、日々の鍛錬も怠らないラルフ。
これらをこなした上で通い続けるのだから、一体どこからそんな気力がわいてくるのだろうかと、ほとほと呆れる。
ラルフの相手が早く決まればいいのに…
そんな憂鬱な気持ちを抱きながらラルフとともに部屋を出た。