偽りの結婚



ふと思い出すのは森の中の友人のこと。



私がここにいる事を知っているアリアはともかく、ディランは私が消えた理由を知らない。

きっと寂しがっているでしょうね…

ううん、私が寂しいのかも。

ディランの横で本を読むことが習慣となっていたため、こんなにもたくさんの本に囲まれても、どこか寂しかった。





「しかし、今日は誰も来ないわ」


王家の書庫は学者のみに開放されており、いつもなら数人の学者が本を求めてやってくるのに。




「ゆっくりできるのは久しぶりかも。」


侍女のモニカが付いてから、随分と周りが騒がしくなった。

何をするにしろどこへ行くにしろ、彼女と彼女の下で働く侍女たちが付いてくる。


< 92 / 561 >

この作品をシェア

pagetop