輪廻怨縛
涎と泡とおしっこの、汚水三点セット。
瞬く間にお茶の間の好感度は下がっていった。
この放送事故から当時の好感度に戻すまでに、実に五年もかかってしまったのである。
同じ過ちは、二度と許されない。
生放送のオファーが来なくなるぐらいならまだいい。
下手すると、芸能界から干されてしまう可能性さえあるのだ。
「なんでいっつも、薬をバックに入れっぱなしちゃうのかな……。肌身離さず持ってなさいって言ってるだろ、いつも」
「ごめんなさい」
「明日こそスカートなりジーンズなりのポッケに入れとかないとだめだからね? 解ったね!?」
「はい、ごめんなさい……」
よほど心配なのだろう、いつになく強い口調で叱り飛ばす。
場違いかもしれないが、こんなに心配してくれる人がいることが心から嬉しく、そして、頼もしく感じる。
「じゃあお疲れ。明日の十六時に迎えに行くからね」
「はい、お疲れ様でした」
こうして、今日の仕事が終を告げた。