輪廻怨縛
お気に入りのルイ・ヴィトンがその中身を全て吐き出したとき、あたしの前には有り得ない状況が出来上がっていた。
目の前に広がるカオスな有様が、ほんの数分先のあたしを示しているかのようで、激しい震えが襲う。
壊れているのだ。
床に散らばっている物全てが、どこがしか壊れてしまった。
ほとんどの物が、その機能を完全に失うほどに破壊され尽くしていた。
これも怨霊の仕業なのだろうか。
私物を通じて未来のあたしの姿を暗示しようとでもいうのだろうか。
息の根を止められて、全ての身体機能が完全に停止している、あたしの姿を……。
嫌だ。
そんなのは、絶対に嫌だ。
まだ……、
死にたくない。
《! そうだ、薬は……!?》
死というキーワードが、ネガティブシンギングによって頭から消えかけた薬という存在をまた蘇らせてくれる。
「薬は!? 薬は薬は!?」
目視では見付けられなかった。
見付からないのだからここには存在しない、この単純な等式を頭の中では理解したつもりだったが、どうやら生存本能がそれを理解できなかったらしい。