輪廻怨縛
気がつくと、全く見覚えの無いところにいた。
やたらと高い木目が剥き出しの天井、総畳張りの床。
障子に襖、壷に掛け軸。梁や欄間には、大変瀟洒な彫刻が施されている。
どう考えても、現代の部屋の造りではい。
《なに!? なんなの!?》
訳が解らない。
ここはどこなのだろう。
そして今は……、いつなのだろう。
少しずつ不安が募ってくる。
気持ちはもう発狂してきそうなほど限界まで張り詰めているのに、身体は身震いする事なく、落ち着いて座していた。
《なんなのよ!? 夢なの!?》
ロケバスに揺られていただけの筈なのに突然訳の解らない場所に飛ばされる、それだけでも充分混乱してしかるべき状況であるにも拘わらず、更に不安要素が重なった。
まったく不運とは重なるものだ。
障子の向こうから突然何かの気配を感じるようになったのだ。
心臓が飛び出しそうなほど驚いた筈のあたしが、気持ちに反してさも当たり前のようにそちらに目を向ける。
障子には髪の長い女性が座って控えるシルエットが映っていた。
いつの間にそこに来たのだろう。
全くと言っていいほど、気配というものを感じなかった。
気付いた時には既にそこにいたのである。