輪廻怨縛
怨霊[河山寿春]
わたしが柳瀬香織さんを初めて見たのは、五年前に液晶テレビ越しでだった。
当時の彼女はまだ、中学生ぐらいだっただろうか。
生放送のバラエティー番組が和やかに進行する中、出演者の一人が突然血相を変えて立ち上がり、首や胸を掻き毟りながら悶え苦しみ始めたのだ。
それが、香織さんだった。
首や胸を掻き毟る。
この行動をとった時点で、病気であれ毒物嚥下であれ、とにかく苦しんでいる原因が呼吸困難であることはほぼ確定的だ。
そのうえで彼女は、若干後ろにのけ反って、胸周りも徐々に膨らんでいるようだった。
人は息を大きく吸い込むとのけ反り、大きく吐き出すと元の体勢に戻っていく。
そして、息を吸い続ければ当然胸周りが膨らんでくるのだ。
《あのコ、息を吐いてない!》
喘息だと判断するのに、さほどの時間は必要としなかった。
テレビを見ながら、番組のディレクターに電話を入れる。
『はい! 福留!』
ガタガタと物音がひどい。
目に見えている部分同様、見えない裏方も騒然としているのだろう。