輪廻怨縛
怨霊。
それは、怨みを持つ霊。
自分を殺すなり、自殺に追い込むなり、騙すなりした者の魂にいつまでも纏わり付く、魂のストーカーだ。
転生し、前世とは無関係の別人になってもなお、その怨念は転生した後の魂にまで、纏わり付く。
香織さんに喘息をもたらした怨霊は、香織さんに取り憑いたのか、それとも彼女の前世に取り憑いたのか……。
運んできたスタッフを擦り抜けるように、別なスタッフがフレームをダッシュで横切る。
どうやら客席第二陣が戻ってきた様である。
テレビには、スタッフに抱かれ、胸を掻き毟りながら、重力の束縛から解放された脚を激しく振り回す香織さんが映し出されている。
あれほど元気に暴れているのなら、心停止までにはまだ数分の余裕があるだろう。
「薬、どうでしたか!?」
『ダメだ! あと、楽屋とジャーマネは全滅だ!』
楽屋には置いていなく、マネージャーも持っていない……。
「そのスタジオ、埃っぽくないですか!」
『おいおいジュシュンちゃん、俺がなんともねえんだぞ!?』
そうだった。
福留さんは、ハウスダストアレルギーだった。