輪廻怨縛
お姫様抱っこでセット中央まで運び込まれた香織さんが、床の上に横たえられる。
さっきまでと比べて、少しおとなしくなってしまっていた。
それでもまだ、懸命に暴れて怨霊や死に対して必死の抵抗を見せている。寝かせ途端ゴロゴロとのたくり回ってしまった。
スタッフがまたフレームを横切る。
客席捜索隊三人目。
この借り物競争がここでゴールになることを切に願うが……
『だめだ、客席も全滅だ!』
との報告が福留さんから入り、周辺からの薬の入手は絶望的な状況となってしまった。
香織さんの呼吸を復旧できないまま、時間だけが刻々と経過していく。
こうなってしまったらもう、救急車の到着を待つしか薬を手にする方法はない。
それまでの間、いかに長く彼女の心機能を維持するか。
今後の方針はその方向に絞られていく。
『ジュシュンちゃん! 救急車、正面に着いたってよ!』
来たらしい。
だが、電波ジャック対策でテレビ局の内部はとにかく入り組んでいる。
玄関前に着いたからといって、すぐに現場に駆け付けて来れるという訳ではない。
残念ながら香織さんは、転がるのを止め、ビクビクと引き付けを起こし、泡を吹き始めてしまっていた。