輪廻怨縛


よかった。
どうやら死は免れたようだ。
救急隊が来たなら、【餅は餅屋】だ。
後のことは丸投げしたほうが無難だろう。


〔気付いたか……?〕


赤星くんの問いがくる。


勿論気付いていた。
そして、一瞬だけ、見た。


「侍……、だったよね」


〔ああ、侍だ〕


画面がCMに切り替わる直前、画面一杯に拡がった黒い影。
その影は髷を結い、紋付袴のようなものを着て、帯刀していた。




間違いなく侍だ。
どうやら、上級武士のようだった。




〔現世じゃねえな、前世だ〕


それは間違い無いだろう。
現世に侍など、いる訳が無いのだから。


「番組に呼んだほうがいいのかもね……」


わたしの番組【前世先生】は、完全オファー制である。
わたしがゲスト候補を選出し、それに対して番組からオファーをかけてもらうのだ。


たいていは数字が取れそうな人達の中からアトランダムで選んでいるが、香織さんのような明らかに霊症を受けている人を見付けたら、すぐにオファーをかけるようにしていた。


勿論そのオファーに乗るか反るかの決定権は全面的に相手にあるのだから、わたしの思いは届かないことも結構あるのだが。
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