輪廻怨縛
運良く失禁跡がテロップと重なって隠れていたために、
ほとんどの視聴者が香織さんが垂れ流した汚水は涎と泡のみであると認識していたらしく、
人気は急降下したものの、芸能界から干されるような事態だけは回避できたらしい。
あれから四年間、ひたすら彼女にオファーをかけ続けた。
だが、その都度
『生放送はトラウマなんです』
と断られてしまう。
タレント生命に係わる騒ぎを引き起こしてしまった現場に復帰することには、やはり四年経っても抵抗があるのだろう。
心の傷は、なかなか癒えないものなのだ。
倒れまくってキャストから降ろされることもしょっちゅうだというのにドラマのオファーを断らないのは若干ムカつくが、生放送とは違って撮り直しが効くのだから、ある意味正解なのかもしれない。
そして、丁度あれから五年経った今年、漸くオファーを受けてもらえたのだ。
撮影の日取りは一ヶ月後と決まり、後はその日を待つだけだ。
それは香織さんとの対面を一週間後に控えた前世先生撮影中に起こった。