輪廻怨縛
〔何か……、何かとんでもない邪気が、ユリアに迫っておりまする! 後生でございます! わたしをユリアに還してくださいませ! 後生でございます!〕
そして百合姫は、突然取り乱して訴えてきたのだ。
これが本来魂が持ち合わせている危機管理能力なのである。
通常通り百合姫が義妹のバックに控えていたなら、今頃彼女は「お義姉さん、なんか……、やな感じがする……」とか何とか、わたしに訴えかけていたことだろう。
だが、義妹は呑気に質問に対する答えを考えている最中だ。
身に降りかかるだろう邪気の存在など、気にするふうでもない。
これが魂を抜かれてしまったが故の、無防備さなのである。
〔早よう早よう! 後生でございます! 早ようユリアに還してくだされ!〕
《門倉優里愛の魂よ、彼女の下へ還り賜え》
取り急ぎ戻したが、一足及ばなかったようだ。
「我が夢……、大村千夏を……、なぶり……、葬ることなり……」
何だか地獄の底から沸き上がってきたかのような、ドス黒い感情に塗れた女の声。
最後の質問に答えた声は、明らかに義妹のもの、否、この世のものではなかった。