輪廻怨縛


〔うまくいくとは思えねえけど……。百合殿〕


いつも自信満々の赤星くんにしては珍しい、弱気な言葉を吐きながら、百合姫を呼び付ける。


〔なんでございましょう?〕


〔この辺りでお控えくださいませ〕


自分の左真横の一メートルぐらい離れた位置に座るよう百合姫に指示を出す。


百合姫が首を傾げながらも、赤星くんが指定した位置に正座した。


それを確認した赤星くんは、ワインドアップから、アンダーハンドスローのモーションを起こす。


右足を大きく踏み出し、左足首が回る。


ふくらはぎ、腿、腰と、身体の回転が上へ上へと伝わり、赤星くんの上半身が回り始める。


胸が回って、いよいよ腕が動き始めると、今まで投げる物を持たないシャドウピッチング状態だった赤星くんの手が、その移動軌道上に存在する百合姫を拾い上げる。


〔ぶっ、無礼であろう! どこを触っておるかぁ!!〕


股間だった。
百合姫が喚くのも、無理はないだろう。


姫が喚く通り、いくらエネルギー体が相手とはいえ、女性の股間を男が握りこむなど、無礼極まる話だが、どうか許してやってほしい。


人体をぶん投げるときのキャッチポイントとして、一番安定する場所が股間なのだから。
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