輪廻怨縛
〔まず百合姫。ゆーに戻ってから暫く意識飛んじまうし、下手したら一生脳に障害残るかもしんねえけど、いいか……?〕
姫は必死にわたしの脳内にストックしてある現代語の意味を咀嚼し、ゆっくりと言葉を選んでいるようだ。
そして漸く、わたしの口を使って、姫の現世である義妹と全く同じ声を出した。
「嫌だな……。脳障害が残るのは……嫌だ。ゆーちゃんは可哀相な子なんだから、これ以上不幸になってほしくないよ……」
確かに義妹は可哀相な子だ。
生まれてすぐに母親を亡くし、父親もその前に死刑囚として、刑を執行されてしまっていた。
ちなみに彼女の父親は、赤星くんだ。
だから彼は義妹のことを気安く【ゆー】と呼ぶのである。
そして、東京競馬場で起こった競走中の事故により、結婚を前提として交際していた彼氏を亡くし、
その事故の翌年、彼をも含めた強烈なレギオンに親友の下半身を奪われ、
更にその翌年には義妹自身が呪われてしまったのである。
大好きな彼氏に大切な人の健康を奪われた揚句、呪われる。
女にとってこれほど悲しいことも、まず無いだろう。