輪廻怨縛
その後ろ姿は、知恵の神というよりも、破壊神や鬼神、或は邪神や魔神といったものに近いような気がする。


さすがは近年稀に見る殺人鬼として処刑された男だ。




それほど強烈で、そしてそれほど、まがまがしかった。




「なんじゃ……、己は……」


義妹を支配した怨霊が聞いてくる。
相変わらず地獄からの使者であるかのような、薄気味の悪い声をしている。


それを聞き捨てて赤星くんは歩を進める。


「なんじゃと……、聞いておる……」


なおも無視する赤星くん。
その態度から、おまえの話なんか聞くつもりはねえという空気がひしひしと滲み出ている。


ついに彼は、義妹の正面に到達。


〔……、……、……〕


無言で後頭部上方に手を伸ばすと、怨念が巣くっているだろう魂の定位置を鷲掴みにした。


短く一言、


〔失せろ……〕


と呟くと同時に、彼の身体全体から立ちのぼっていたオーラが、魂の定位置を握り締めている左手へと寄っていく。


〔よーく覚えとけ……、俺は八心思兼神赤星拓真。そこにいる河山寿春の守護神だ……。あいつが守ろうとするもんは、俺が守らなきゃなんねえもの……〕


いっつも威張っているだけだと思っていた彼が、嬉しいことを言ってくれた。
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