輪廻怨縛
大村千夏が、まだ見ず知らずの全くの他人であった場合は全然問題は無い。
問題なのは、大村千夏=柳瀬香織の場合だ。
大村千夏を雪奈が祟っている。
柳瀬香織を喘息侍が祟っている。
この二つは既に確定していること。
不変の事実である。
超えてしまうのだ。
大村千夏の魂を呼び出した際に飛び込んでくる怨霊の数が、わたしのキャパシティーを超えてしまうのである。
いくら人助けのためとはいえ、あんな辛い思いをするのは嫌だ。
それより何より、わたしの力を絶対的に必要としている、守護神八心思兼神が頑としてそんなやり方を認めないだろう。
〔当たり前だ〕
お墨付きが来てしまった。
地道に捜査して、大村千夏に辿り着くしかないようだ。
「当たってみる? 被疑者Y」
今の所筆頭被疑者は香織さんだ。
オファーをかけたときにマネージャーから貰った名刺に電話をかけてみる。
〔無駄だと思うがな。プライバシー保護とか言ってさ、来週本人から聞けって言われるのがオチだぞ〕
『はい、川上です』
多分赤星くんの言った通りだと思うが、粘るだけ粘ってみよう。