輪廻怨縛


「初めまして、来週ご一緒致します、河山寿春です」


『ああ、こちらこそ初めまして。来週はうちの柳瀬がお世話になります』


やけに馬鹿丁寧な返事がくる。
声の感じから、どうやら三十ちょっとぐらいの年齢と思われる。


「突然で申し訳ないですが、できればですね、教えて頂きたいのですよ、香織さんの電話番号」


さて、どう来るか……。


『すみませんね、そういう個人情報はちょっと……。来週柳瀬からお伺いください』


やっぱりダメか……。


「あの、わたしのこと、口コミとかで聞いたことはありませんか?」


〔おまえなぁ、もっとなんか、別な言い方ねえのかよ……〕


うーん、確かに直接的過ぎたが、取り敢えず失言でもない筈だ。


『評判は常々お聞きしますよ。柳瀬などは、『やったー! 河山さんと絡めるー!』と物凄い喜びようです』


「その口コミ、信用して頂けないでしょうか……」


〔何言ってんだバカ! 空気読めバカ!〕


     ?


そんなに失言だったのだろうか。
そこまで言われる筋合いも無いと思うのだが。
< 69 / 87 >

この作品をシェア

pagetop