輪廻怨縛


「まーちゃん今どこ?」


『ロケ中だから、ホテル泊まってる。岩国グランドホテル』


「守護神飛ばすから、部屋番までお願い」


麻里愛はわたしの守護神が自分の父親だということを知っている。
そして彼女は、心の底から憎んでいるのだ。
赤星くんのことを。


これは賭けだった。




【オヤジと係わるぐらいなら、自分で結界張る】




こう結論してもらうための誘導なのである。


『……、……、……』


暫く無言だった。


何やら物音がしている。もしかすると、結界を張っているのかもしれない。


まだ物音は続く。


わたしが知る限りでも三人の人から怨みを買っていた前世の大村千夏。
いったい何をしでかしたのだろうか。


『結界張った。クソオヤジのツラだけは絶対に見たくない。ただでさえあいつと全くおんなじ顔、毎日見なきゃいけないのに……。本人の顔なんか死んだって見たくない……』


最後のほうは、涙声になっていた。
いったい彼女はどんな気持ちで、心から憎んでいる相手と全く同じ顔をしている自分自身と二十五年間付き合ってきたのだろう。


この呼出しが、二人のわだかまりの解消にも繋がってくれればよいのだが……。
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