輪廻怨縛
「ロケ中だから、ホテル泊まってる。岩国グランドホテル」
『守護神飛ばすから、部屋番までお願い』
そう来たか!
これで麻里愛の答えは決まった。
あたいの絡まない、完全な門倉麻里愛一個人として地獄、現世、あの世の三界に存在する全ての者の中でも最も嫌いな人物を持ち出してきたのだ。
彼女の赤星嫌いは、大村の比ではない。
既に芸能界にデビューした後であるにも拘わらず、赤星と同じ顔なのが嫌だと美容外科手術を受けることまで考えたぐらいなのだから。
案の定麻里愛は怨霊封じの御札を作り始めている。
すまない、雪奈……、俊秀……。
あたいが裏切った訳ではないのだということを、どうか解ってほしい。
例え途中で何かあったとしても、あたいはあんた達の……、同志だ。
これだけは、信じてほしい。
あたいのそんな思いを他所に、現世である門倉麻里愛は、同志除けの結界を完成させていく。
「此より内、一切の怨霊の侵入を禁ずる!」
麻里愛の術は陰陽師の血を引いてはいるものの、扱う得物は札専門である。
どちらかというと、札師とか、符呪師とかの類に入る。