恋する季節の後ろ髪

 そらみたことか。

 ろくなことがありゃしない。

 どうしてこんな時間にこんな場所でこんなに熱く語ってたりするんだよ、おれは。

 やっぱりさっさと“ケツまくって”退散しておけばよかったんだ。

 だからこんなことになる。

 こんなことになるんだ。

 おれの目をみて話してきたりするんだ。

 それをみてドキッ、となんてするんだ。

 綺麗だな、なんてがらにもないこと考えたりするんだ。

 なけなしの小遣いで買ったおでんが公園の“こやし”になっちまったりするんだ。

 反則だろう。

 チューリップの中から微笑むとか。

 自分で自分の言葉の理解に追いついてないっていうのに、そいつをひとまずふたまずみまず街灯の向こうに蹴飛ばす、その微笑みは。

 反則だろう。

「あ~。なんだ。腹が、へったな」

 ぐるぐると思考が七転八倒。

 出逢いが不可思議なら今後の展開も予測不能。

 後悔する余裕すら、今のおれにはありゃしない。

 ただひとつ、いえるのは、

「このパーカーも……」

 ろくでもない状況を心の隅で密かに楽しんでいる俺もまた、



「綺麗な梅干し色でしょう?」



 ろくでもないってことなんだろう。

< 17 / 38 >

この作品をシェア

pagetop