恋する季節の後ろ髪

 唐突に訪れた別れは、実はもうずいぶん前からそこにあって。

 そう、紫陽花のように。

 けれど視界を黄昏させていた俺は、景色に同化したその淡い表情で咲いた想いに気付けず。

 なおのこと、本当の“花”に気付けなかったんだ。

 空が煙る季節には紫陽花と、あいつの後ろ姿。

 巡るほどに鮮やかに。

 過ぎゆくほどに色を変え。

 ゆえに常に新しく。

 だからこそ、忘れることなど出来るはずも、ない。

 煩わしい雨に悪態をつきながら、きっと俺はまだしばらくこの時季を毎年待ちわびることだろう。

 この痛みと後悔のすべてが紫陽花に吸い込まれていくまで。

 まだしばらくは。

 どうか、まだしばらくは……。


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