恋する季節の後ろ髪
それにしても、
「ほんま。えぇ天気じゃねぇ……」
そんな言葉が自然と零れる。
菜の花と同じ視線になったらば、深呼吸をしている間にお尻に根っこが生えてしまうくらいだ。
「でも……」
大きな夢を叶える力は、ここにはない。
わたしにとって一等素敵な町でも、誰かにとってはただの何もない町。
それを否定するつもりはない。
けれど、認めることが出来なかった。
あの頃のわたしは、自分の淋しさを訴えることでしか彼を引き止める術を知らなかったから。
方法はいくらでも本当はあって。
ベストな答えはシンプルで。
でもその答えを未来に描くのは、ひどく難しく。
ようは、わたしがついて行けばよかっただけのことなのだ。
それなのに、
『なんでついてこい、いうてくれんの?』
そういうのが精一杯で。
『ずるいわ……』
彼にすがるように投げつけた言葉は今思えば全て、自分自身に宛てた言葉だったのかもしれない。