Parting tears
プロローグ
 ♪ I was not able to believe in Though I loved it that much ♪

 車の助手席から外の景色を眺めていた私は、ラジオから流れる曲に耳を傾けた。
 それは十年前、流行っていた懐かしい曲だった。Parting tears
 
 結麻は運転席の夫である龍揮に視線を向けた。
 結婚して五年、知り合ってからは六年が経つ。

 夫は大分変わったと痛感する。お互い年を取っていくのだし、当たり前かもしれないが。

 龍揮はお腹が少し出てきて、髪型も特に気を付かわなくなっている。おまけに今日は結婚記念日だというのに気付いていないようだ。

 休みだった今日、私の買い物に付き合い一緒に出かけたのだが、プレゼントをくれるわけでもなく、何も云わない。やっぱり忘れているのだろうか。龍揮は欠伸までしている。

 こんなはずじゃなかったのに。

 夫婦になり一緒に寝起きを共にすると、相手の嫌な部分ばかりが見えてくる。朝は機嫌が悪いことや、優柔不断なこと。それに、記念日などを大事に思って欲しいのに、忘れるなんて……。

 出逢ったばかりの頃、龍揮はお洒落でマメな人だった。今じゃ寝癖のまま出かけたり、髭を剃らない日も多々ある。

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