Parting tears
 海岸の階段のところへ戻ると、今西が私と和哉を交互に見た。


「今、二人が戻ってきたら怖い話ししようって云ってたんだ」


「そしたら、もうトイレ行けないじゃん」


 私が真剣にそう答えると、美久達は大笑いした。


「結麻、そしたら私が一緒にトイレ行ってあげるって」


 美久がそう云うので、それならいいやと私はすぐ納得した。

 それから怖い話しを順番に話していたのだが、相変わらず隼人は怖い顔で怖い話しをするので、私は何だか隼人の怖い顔が可笑しくなり、つい笑い声を洩らした。


「おい、結麻、俺がせっかく怖い話ししてんのに笑うなよ。気分台無しじゃねーか」


 隼人は私の頭をコツンと軽く叩き、それを見ていた今西が触れられたくない話題を振った。


「カップルみたいじゃん。マジ付き合っちゃえよ」


「そうだよ。彼氏と別れて隼人と結麻が付き合えばいいのに」


 今西に続き、美久もそう云う。しかし和哉だけは何も云わず、缶コーヒーを手に取り、静かに飲んでいる。一口飲むと、和哉は腕時計を見て云った。


「もうこんな時間だよ。そろそろ冷えてきたから帰ろうぜ」


 その一言で、一斉に携帯や腕時計で時間を確認し、午前二時を過ぎていたので帰ることになったのである。


< 11 / 79 >

この作品をシェア

pagetop