Parting tears
「何だよ、何、人の顔じろじろ見てんだよ。腹でも減ったのか?」
龍揮は運転しながら視線を感じたのだろう。
腹でも減ったのかって、そんなセリフしか出てこないのか。
私はガッカリした。
「別に。もう夕方だね」
今日が結婚記念日だと気付くかもしれないと少し期待したのだが、それは間違いだった。
「何だ、やっぱり腹が減ってるんだな。コンビニ寄って、チョコレートでも買うか?」
「お腹空いてないよ」
私はそっけなく云うと軽く溜息を吐いた。
現実逃避するように視線を窓の景色に戻すと夕日に目を細め、ラジオから流れる曲に耳を傾ける。
懐かしい。あれからもう何年も経つのね。あの人は今頃どうしているのだろうか。あの人とは、もちろん夫の龍揮ではない。まだ龍揮と知り合う何年も前の話しである。
こうして結麻の記憶は十三年前の冬に遡った――。
龍揮は運転しながら視線を感じたのだろう。
腹でも減ったのかって、そんなセリフしか出てこないのか。
私はガッカリした。
「別に。もう夕方だね」
今日が結婚記念日だと気付くかもしれないと少し期待したのだが、それは間違いだった。
「何だ、やっぱり腹が減ってるんだな。コンビニ寄って、チョコレートでも買うか?」
「お腹空いてないよ」
私はそっけなく云うと軽く溜息を吐いた。
現実逃避するように視線を窓の景色に戻すと夕日に目を細め、ラジオから流れる曲に耳を傾ける。
懐かしい。あれからもう何年も経つのね。あの人は今頃どうしているのだろうか。あの人とは、もちろん夫の龍揮ではない。まだ龍揮と知り合う何年も前の話しである。
こうして結麻の記憶は十三年前の冬に遡った――。