Parting tears
 辺りが暗くなり、そろそろ帰ろうということになったのだが、和哉は私が心配だと云い、家まで送ってくれたのである。

 歩きながら、そっと私の手を繋いでくれた時、和哉は思い出したように話し始めた。


「そういえば、ドライブ行った時の話しで、隼人が俺に後から云ったんだ。『俺、どさくさに紛れて、車の中で結麻の手を握っちゃったよ』ってさ。俺はまだ結麻に告白する前だから、心の中で腹立ててたんだよなぁ。今では俺がこうして結麻の手を握ってるんだよね」


 和哉の横顔は嬉しそうだったが、隼人の奴、余計なことを云うんだなと少し腹立たしく思った。

 私の家の前に到着すると、和哉は訊いた。


「俺、また後で電話してもいい? 独りになると結麻の声聞きたくなるんだ」


「いいよ。じゃ待ってるね」


 そう云って、帰る和哉の後姿を見えなくなるまで見送った。一方和哉は何度も振り返り、名残惜しそうに手を振っている。
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