Parting tears
第八話 不穏な空気
 和哉が私を連れてきた場所は、滝の近くに大きな池があって、地元の人しか知らない場所らしく、和哉はそれをY県在住の友達に聞いたという。

 もう日が落ち真っ暗だったが、明日の朝一緒に綺麗な景色を見ようと、私は楽しみに思えた。


「なぁ結麻、俺といて幸せか?」


「当たり前でしょ。和哉は?」


「もちろん。そういえば美久とは会ってるの?」


 私はかぶりを振った。あの電話以降、何もなかったかのように電話がきたが、美久とは上辺の話ししか出来なくなり会っていない。会うのが怖いのだ。美久に何を云われるのか想像すると、和哉との仲を壊されそうな気がしたから。

 俯いた私を心配したのか、和哉は話題を変え、急に怖い話しを始めた。


「この近くに滝があったろ。あの近くには昔ペンションがあったんだって。でもそのペンションで従業員が惨殺される事件があったらしいんだ。それで、ペンションは廃墟になったんだけれど、夜な夜な従業員の幽霊が出るんだって」


「ちょっと、やめてよ。怖くて眠れないじゃん」


 私は怖くなり、口を尖らせた。


「ごめんごめん。でも大丈夫だよ。俺が側にいるんだし」


「和哉、そんなこと云って先に寝ちゃうんでしょ」


 そんな話しをして、ふと車に内蔵されている時計を見ると午前十二時を過ぎている。
 疲れもあり、寝ようということになった私達は、車のシートを倒し眠りについた。

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