Parting tears
 どちらからというわけではないが、お互い目を逸らし、和哉が訊いた。 


「結麻は今彼氏いるの?」


「まあね。和哉は?」


「付き合おうかなと思っている子はいるけど、どうしても結麻と比べちゃうんだ。やっぱり俺の中で、結麻が今でも一番綺麗で、一緒にいて楽しかったしな。そう簡単には忘れられないよ」


 私は返す言葉が見つからなかった。

 和哉を忘れられなかったのは私も同じだから。でもそれを云えば、きっとまた恋人になることは簡単なのかもしれない。でもお互いを信じることは、きっと出来ないんだと思う。一度壊れてしまったものは二度と元に戻らないから。戻ったように見えても、ヒビがいつしか広がり、すぐに壊れてしまう。私はそんなふうに思っていた。だから一緒に埋めたタイムカプセルのことにも触れなかった。


「何か歌おうよ」


 私は明るくそう云うと、「Parting tears」をかけた。


 ♪ I was not able to believe in Though I loved it that much ♪ 


 この歌の歌詞のように、信じあえなかった、あんなにも愛していたのにと思い、涙を堪えながら私は歌った。

 ふと和哉を見ると、画面の歌詞を真剣に見ながら、目に涙を溜めている。

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